
行動科代表 中西 薫
子どもの頃から、両親にあきれられるほど動物が好きだった私は、獣医を志し、北海道大学獣医
学部に進学しました。
当時の私は、獣医学部が動物を医学の観点から学び、癒す術を体得することができる唯一の学部
だと信じていましたが、入学後、すぐに私が直面したのは、ありとあらゆる動物の実験でした。
そのころの国立大学獣医学部のカリキュラムは、実験動物にむごい苦しみを長きにわたって味あ
わせる本当に酷いものでした。
私は、朝から晩まで授業で動物実験に参加するうちに、実験で苦しませた動物の断末魔の鳴き声
が幻聴として聞こえるようになり、彼らに死んで詫びたいと願うようになり、精神科で重いPTSD
と診断され、一旦大学を休学しました。
学部生は、実験してレポートを書かなければ単位が出ません。
復学後は、約5年間在学しましたが、どうしても、動物実験を受け入れることができず、自主退学しました。
退学してからもPTSDに苦しまされ、日常生活を送ることも困難であった中、私は2頭のポメラ
ニアンと出会います。
その2頭との暮らしが、私を犬の行動の世界に導くきっかけとなりました。
イギリスで社会福祉の仕事をしながら、国内外で無我夢中で修行する中、私は、問題行動の中で
も特に攻撃行動から抜け出せなくなっている犬たちの苦しみを知ります。
そんな彼らを治すことができる「攻撃行動の治療家」になりたい、そして、飼い主さんに助けを
届けたいと強く願い、獣医師である夫とあじな動物病院を開院する際、「診療科」と併せて、私が
代表となる「行動科」を開きました。
しかし、その頃はまだ、「行動科?なんじゃそら?」という感じです。
最初は「しつけ相談」からスタートし、「犬のお困りごと相談」、「犬の行動の相談所」、「犬の行動の専門の先生がいる科」となり、現在の「あじな動物病院行動科」となりました。
「十人十色」と「十犬十色」
例え、同じような行動をしているように見えたとしても、犬は一頭一頭みな違うし、行動の理由
もそれぞれ違います。
また、犬だけでなく、犬を育て支えている飼い主さんも、お一人おひとり、みなさん違います。
一頭のわんことひとりの飼い主さんが織りなすペアも、ひとペアひとペア、みな違います。
どのペアも、ユニークで素敵です。
その素晴らしいひとペアに全力で向き合い、最後まで寄り添うことが、現場のプロの仕事であり、
私は、犬の行動のプロとして、最後まで、現場で力を尽くしていきたいと思っています。
そして、犬という動物とその行動への熱い思いに共感し、相談と信頼を寄せてくださる飼い主さ
んたちに深く深く感謝いたします。
私はこの仕事を心から愛し、誇りに思います。
あじな動物病院行動科代表 中西 薫