いいとこリストとは、犬の「できないこと」ではなく「できていること」に意識的に注目し、その内容を書き出すことで行動の見方を整えるための概念です。問題行動に注意が偏りやすい状況の中で、犬の現在の学習状況や安定している行動を可視化し、行動評価の基準を整える役割を持ちます。本ページでは、その定義と目的、行動理解および行動変容との関係を構造的に整理します。
いいとこリストとは何ですか?
いいとこリストとは、犬の「すでにできている行動・得意なこと・克服できたこと」 を意図的に書き出し、行動を見る視点(観察のバイアス)を整えるための概念的ツールです。
犬との暮らしにおいて、問題行動や「できないこと」にばかり注意が向いてしまう際、このリストを用いることで、犬の学習状況と行動の全体像を客観的かつ肯定的に把握し直すことができます。
なぜ、このリストが行動の理解に役立つのですか?
1. 観察の「フィルター」が変わる
人の脳は、ネガティブな要素(吠える、噛む、できない)に優先的に注意を向ける傾向があります。いいとこリストを作成することで、意識的に「できている行動」へ注意を向けさせ、観察のフィルターを矯正します。これにより、犬の日常の安定した部分が見えるようになります。
2. 行動変容の「資源」が見つかる
犬が好んで行う行動や、得意とする活動は、
行動変容や行動治療を行う際の強力な強化子(ごほうび)や、環境設定のヒントになり得ます。
リストアップされた項目は、単なる記録ではなく、将来的なアプローチのための「資源」となります。
いいとこリストはどのように使うのですか?
Step 1:書き出す
愛犬の様子を観察し、以下の項目を具体的に書き出します。些細なことでも構いません。
• 得意なこと: (例:名前を呼ぶと見る、オスワリが早い)
• できるようになったこと: (例:散歩中に立ち止まれるようになった)
• 克服したこと: (例:チャイムの音に以前ほど反応しなくなった)
• 好きな活動: (例:特定の場所での匂い嗅ぎ)
Step 2:時々、見返す
定期的にリストを見返すことで、犬の成長の軌跡(学習の履歴)を再確認します。日々のトラブルに隠れて見えなくなっていた「成長」を可視化することで、飼い主自身の心理的 余裕も生まれやすくなります。
Step 3:行動観察の基準点にする
問題行動への対応を考える前に、まずこのリストを確認します。「できないこと」を数えるのではなく、「今できていること」をベース(基準点)にして、そこからどう広げていくかを考えるための土台として使用します。
よくある誤解(FAQ)
- これは「褒めて伸ばす」だけの方法ですか?
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いいえ。褒めることは大切ですが、このリストの本質は「賞賛」ではなく「現状の正確 な把握(アセスメント)」です。
犬の能力を過小評価せず、正しく認識するための観察記録です。 - 問題行動の解決になりますか?
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直接的に行動を治す技法(テクニック)ではありません。しかし、飼い主の視点が変わり、犬との関係性が安定することで、行動変容及び、行動治療がスムーズに進むための「土壌」を作ります。
