いまあなたは、愛犬の行動で悩んでいますか。
犬と暮らしていると、どうしても「できないこと」や「困っていること」に、目が向いてしまいがちです。
吠える、咬む、イタズラする、落ち着きがない、など、困った行動が続くと、それ以外の姿は見えなくなってしまいます。
ですが、そのままでは、愛犬の行動をありのままに理解することが難しくなってしまいます。ひいては、いつの間にか、愛犬の本当の姿を見失ってしまうことにもなりかねません。愛犬には、好きなこと、得意なこと、上手にできていることが、実はたくさんあるのです。
そんなとき紹介したいのが、あじな動物病院行動科の「いいとこリスト」です。
これは、犬の「できている行動」に意識的に目を向けることで、犬の行動の見方の偏りをなくし整えるために、すぐにできる方法です。
あじなの「いいとこリスト」とはなんですか?
あじなの「いいとこリスト」とは、
犬の行動のうち、「できないこと」ではなく、「すでにできていること」に意識的に注目し、それらを一つずつ書き出して作るリストのことです。
愛犬の、
・好きなこと
・得意なこと
・上手にできること
・できるようになったこと
・克服したこと
などを、思いつく順に一つずつ、できるだけ具体的に書いて並べていきます。
一見すると、犬の行動について、ただ前向きなだけの記録のように思えるかもしれません。
ですがこのリストには、犬の困った行動を変える、驚くべき力が秘められているのです。
「いいとこリスト」はどう犬の困った行動を変えるのですか?
あじなの「いいとこリスト」には、犬の困った行動を変える力があります。その理由を説明します。
まず、最初の理由は、人間は何に注意を向けているかで見えるものが変わるから、です。
私たち人間は、問題や困難に直面すると、ネガティブなものに優先的に注意を向ける傾向があります。犬の行動についても同じことが言え、愛犬の行動に悩むと、実際に愛犬はいろいろな行動をしていても、その中の「できないこと」「困った行動」ばかりが目についてしまいます。
そうすると、愛犬のしているすべての行動が、「できない」や「困った」というネガティブな行動に見えてしまい、愛犬が「できない犬」「困った犬」に余計に思えてきます。
あじなの「いいとこリスト」では、意識的に愛犬の「いいところ」に意識を向け、考え、実際に書き出していくことで、私たちの物の見方の偏りを修正し、フラットに整えます。
そうすると、愛犬がしているさまざまな行動が、ありのままに見えるようになります。
犬の困った行動を、犬に学習を促すことで変えていくとき、この「行動をありのまま観察し、評価する」ことが欠かせないのです。
犬の困った行動を変えるための手がかりは「いいとこリスト」にあるのですか?
あじなの「いいとこリスト」には、犬の困った行動を変える力があります。
次の理由は、「いいとこリスト」に書き出したことの中に、犬の困った行動を変えるために欠かせない手がかり、いわば「材料」が含まれているからです。
たとえば、あじなの「いいとこリスト」には、愛犬の好きなこと、得意なこと、上手にできることなどが書き表されていますが、これら犬が好きなことや、好んで行うこと(行動)、得意なこと(行動)は、それ自体がその犬が欲する、犬にとって価値のあることです。
犬にとって価値のあることや行動は、犬に行動を教える行動形成、犬の行動を変える行動変容、犬の行動を治していく行動療法などの困った行動を変えるプロセスにおいては、報酬や強化子などと呼ばれ、困った行動を変えるために主に用いられます。
具体的には、困った行動ではなく、望ましい行動を犬が行ったときに、それら犬にとって価値のあることをさせたり、犬にとって価値のある行動をする機会を提供したりすることで、犬に報酬を与え、望ましい行動を伸ばしていくわけです。この手法を、正の強化と呼びます。
こうすることで、犬は困った行動ではなく、より犬にとって価値のある結果に通ずる、望ましい行動をするようになる、という仕組みです。
それだけではなく、たとえば犬が困った行動をしなくて済むように、たとえばその欲求不満を解消すべく、犬の生活する環境を変えたり整えたりすることも、困った行動を変えるうえでは大切ですが、このとき、環境をどういう風に変えれば良いか、どんな行動や活動ができるように環境を整えてあげれば良いかという方向性も、あじなの「いいとこリスト」を見れば明らかです。
「いいとこリスト」に書き表した、愛犬の情報は、愛犬の困った行動を変えるために重要な、いわば資源となるのです。
「いいとこリスト」はどう作って、どう使えばいいですか?
あじなの「いいとこリスト」の作り方は、実にシンプルで、そしてとても楽しいです。
愛犬の、
・好きなこと
・得意なこと
・上手にできること
・できるようになったこと
・克服したこと
などを、思いつく順に一つずつ、できるだけ具体的に書き並べます。
どんな些細なことでも構いません。
たとえば、においを嗅ぐのが大好きだ、お座りの合図で座るのが素早い、名前を呼ぶと振り返ってくれる、散歩中に呼んだら戻って来てくれるようになった、外で吠えた犬の声に釣られて吠えなくなった、など、そうした特徴や変化を書き並べていきます。
愛犬の素敵なリストが完成したら、どうぞそのリストをしまいこまず、ときどき見返してください。
定期的に見返すことで、日々の繰り返しの中でどうしても見えにくくなってしまう、愛犬の変化や成長に改めて気づき、評価することができるようになります。
犬の行動の「成長」を可視化することも、飼い主さんと愛犬の信頼と愛情の絆を深めるために、あじなの「いいとこリスト」の重要な役割と言えるでしょう。
「いいとこリスト」で愛犬の素晴らしさに気づけますか?
愛犬の「できないこと」や「困った行動」ばかり見えてしまうとき、それは、本当は犬の問題ではなく、犬の「見え方」の問題であるかもしれないと、疑ってみてください。そして、あじなの「いいとこリスト」を書いたり、振り返ったりしてみてください。
そうすればきっと、愛犬の好きなこと、得意なこと、上手にできること、できるようになったこと、克服したことなど、愛犬の成長や進歩にも、同じように目が向くはずです。
あじなの「いいとこリスト」は、犬の行動をそのありのまま客観的に見ることを助け、犬の困った行動を解決するときに欠かせない、行動の評価を支えます。
また、犬の困った行動が減ったり、そもそも起こりにくくなる環境に犬の暮らしを整えることを助けます。
それだけではなく、犬の困った行動を、犬を褒め報酬を与える正の強化の手法で変えるときに最も重要な報酬(強化子)を適切に選び用いることも、助けます。
このリストをきっかけに、飼い主さんが愛犬とその行動の素晴らしさを再確認する一助となれば、幸いに思います。
あじな動物病院行動科 中西薫
このページで用いる主なことばの意味と位置づけは、
行動百花|行動のことば に整理しています。
犬の「できないこと」だけではなく、
いま既に出来ていることへ目を向ける視点については、
「いいとこリスト」でも整理しています。
犬が「できる行動」を少しずつ増やしていく教育については、
行動形成トレーニングのページをご覧ください。
犬の困った行動を、
「性格」ではなく「観察」から整理する視点については、
困った行動一覧ページでもまとめています。
あじな動物病院行動科のレッスンについて詳しくは、
レッスンページをご覧ください。





