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ご褒美を決めるのは、犬である

1月は、この言葉から始めたい

何がご褒美(報酬)になり得るかは、犬が決めます。
「効かない」のではなく、価値が犬に届いていないだけかもしれません。
ご褒美は、誰に・何のために・どう渡すかで意味が変わります。

関連:
犬の行動が変わる仕組み
https://ajinavc-behaviorsec.com/knowledge/learning-mechanism/

Happy New Year! 2026年がスタートしました!
犬という素晴らしい動物の真の姿を、彼らの行動からひも解くこと。
それが「犬の行動学」と呼ばれる世界ですが、
その豊かな世界を今年も皆さんとご一緒できることを、心から楽しみにしています。

さて、そんな一年の幕開けにふさわしい、核心に迫る言葉をご紹介したいと思います。

But for now remember: only learner decides what’s reinforcing!

CANINE ENRICHMENT FOR THE REAL WORLD P95より抜粋
Allie Bender & Emily Strong 著

ー それはさておき、このことを覚えておいて欲しい
何がご褒美(報酬)となり得るかは、学習者である犬が決めることである! ー

初めてこの言葉を本で読んだとき、その文言のあまりの鋭さに打たれ、
思わず表紙に油性ペンで書き込んだほどです。(写真参照)

迷いのない「教育」のために

この言葉の真の素晴らしさを理解できるということ。
それはすなわち、
褒めてご褒美を届ける教え方(正の強化、陽性強化などと呼ばれます。)で
犬に望ましい行動を教えることが出来る、ということです。
しかも、一切の躊躇いや、迷いを感じることなく。

それがどれだけ、教えられる側の犬だけでなく、教える側の人間にとっても、
心安らかで自信に溢れたことであるか。
とても言葉で書き表すことは出来ません。

犬にご褒美をあげるのは、なぜでしょう?

ご褒美をあげることで、将来伸ばしていきたいと人間が願う
「望ましい行動(Desired Behavior)」があるからです。

「望ましい行動」がある、ということは、
人間がして欲しくないと願う
「望ましくない行動(Undesired Behavior)」ももちろん存在します。

が、これは完全に人間側の都合で、犬には関係ありません。

では、望ましい行動を伸ばすために、
なぜご褒美をあげる必要があるのでしょう?

望ましい行動をしたら、
良い結果を得られたという事実を、
犬自身に経験させ、学習させる必要があるからです。

十分に学習することが出来ると、
犬は自ずとその行動を、
「望ましくない行動」から「望ましい行動」に
変えることが出来るようになります。

これを、教育(Education)と呼びます。

良い結果とは、誰にとっての良い結果か

それでは、良い結果とは、誰にとっての良い結果でしょう?
それはもちろん、犬自身にとってにほかなりません。
だって犬がもらう(受け取る)のですから!

私たち人間が犬に与える「ご褒美」ですが、
そのご褒美は、受け取る犬にとって、真に価値のあるもの、
つまり、犬自身が欲しい!と切望するものでなくては、
全く意味がないのです。

「ご褒美が効かない」ではなく、価値が届いていない

ですが、

「ご褒美」は人間が決めて与える、例えば「食べ物」であり、
犬がそれを望んでいるかどうかという肝心要は理解されないままに、

「ご褒美をあげても犬が欲しがらない」
「ご褒美をあげても犬が変わらない、治らない」

と悩む飼い主さんは、まだ多くいらっしゃいます。

もしかするとそれは、
「ご褒美が効かない」のではなく、
私たちがご褒美だと思っているものが、
犬に価値として届いていない。
それだけなのかもしれません。

それだけでなく、

「ご褒美をあげるのは、犬を甘やかすことである」
「ご褒美をあげるから、犬が言うことを聞かなくなる」
「ご褒美をあげるから、犬が人を下に見るようになる」
「ご褒美をあげるから、犬が人を馬鹿にするようになる」

などの、全く悩まなくて良い情報に、
飼い主さんが躊躇い、迷うこともまだまだ多いと、
問題行動解決の臨床現場に身を置く
ひとりの行動のプロとして、思います。

誰に、何のために、どう渡すか

「ご褒美」とは、
誰に、
何のために、
どの期間、
どう与える(提供する)
ものであるのか。

それさえ明確に分かれば、
躊躇ったり、迷ったり、悩んだりせず、
愛犬を愛する心のままに、ご褒美を与え、
「望ましくない行動」を「望ましい行動」に
変えることが出来るのです。

そして、それはそんなに難しいことではありません。

まず、知ること。
そして、理解すること。
そして、日常生活で実践すること。

2026年も、あじな動物病院行動科は、
犬を愛してやまない皆さんに、
犬の行動を、
知ること・理解すること・実践することの素晴らしさを、
全力でお届けしていく所存です。

最後に:いま手の中のそれは、犬のご褒美か

最後に、
あなたの手の中にある「ご褒美」は、
その犬にとっての本当の「ご褒美」になっているで しょうか?
今一度、手の中の「ご褒美」を見つめてみてください。

Q&A|よくある問い

犬にご褒美をあげるのはなぜ?

望ましい行動のあとに、「良い結果」を経験させ、学習を進めるため。

良い結果とは、誰にとっての良い結果?

犬にとって。受け取るのは犬だから。

ご褒美が効かない理由は?

「効かない」のではなく、価値として犬に届いていない可能性があるから。

ご褒美で迷わないために何を考えればいい?

行動が変わるために、
誰に/何のために/どの期間/どう与える必要があるかを整理して考える。

この記事の監修:
中西 薫(なかにし かおり)あじな動物病院 行動科代表

【専門領域:行動科学の統合的アプローチ】
応用行動分析学(ABA)、動物行動学、脳科学、遺伝学、エピジェネティクス、栄養学、獣医学、医学など、多角的な科学的知見をベースに、犬の行動問題を紐解く専門家。

「攻撃行動の治療家」として、科学的根拠に基づき、行動変容および、診療科との連携のもと行動治療を行う。

動物と飼い主、双方のQOL(生活の質)を最大化することを使命としている。

中西 薫
あじな動物病院行動科代表
広島県出身
1999年 北海道大学獣医学部入学
2005年 同大学自主退学
「攻撃行動の治療家」を目指し国内外(イギリス、ベルギー、トルコ、デンマーク、アメリカ、オランダ)で修行
2014年 あじな動物病院行動科開設
    (広島県廿日市市)