本ページは、若齢のジャックラッセルテリアとその飼い主さんから寄せられたご相談、および継続的なレッスン内容をもとに、発散不足が犬の行動にどのように現れていたかを整理した臨床の記録です。
ご相談
5ヶ月のジャックラッセルテリア(以下JRT)です。
散歩、ご飯、すべてに興奮してしまい、どう対応すればよいのかわからない状態です。
ご相談への回答
人間の「ギャングエイジ」になぞらえて、犬にもいわゆる「デビル期」と呼ばれる時期が存在すると言われています。
おおむね3歳頃までの成長過程で、いたずら、破壊、吠え、大暴れ、指示をきかないといった行動が目立ちやすくなる時期です。
この時期は犬種を問わず訪れますが、その中でも特に飼い主さんを悩ませやすいのが、破壊が大好きな破壊者タイプの犬です。
体格が大きい犬種、筋肉質な犬種、活動性の高い犬種などは、こうした行動が目立ちやすい傾向があります。
では、このような破壊者タイプの犬は、どのように育てていけばよいのでしょうか。
答えは、意外とシンプルです。
まず、頭と体を使った「発散」を充実させることです。
当科のレッスンで撮影した動画(当科Instagram参照)に登場するまだ若いJRTも、飼い主さんとのお手入れ練習や動物病院での保定・採血慣らしを頑張ったあと、そのご褒美として、思いきり発散の時間を楽しみました。
愛すべき破壊者タイプの犬を上手に育て、教えていくための重要な視点です。
若齢期のJRTは、気力も体力も急速に増していく時期にあります。
加えて、JRTは心身ともにエネルギー量が高く、自分の意思をはっきり持った職人気質のテリアです。
「じっとして」「静かにして」「お利口にして」「大人しくして」「とにかく寝ていてほしい」
飼い主さんがそう感じてしまうのは、至極自然なことです。
しかし、じっとすることだけを求め続けると、犬が飼い主さんと対立しやすくなるのも事実です。
この時期に大切なのは、まず頭と体を使った発散を十分に確保すること、そして発散のレパートリーを増やしていくことです。
犬が、飼い主さんのことを「行動を制限する存在」ではなく、「楽しみをもたらしてくれる存在」と理解できるよう、意識して関わってみてください。特に3歳頃までは、この点を意識してみてください。
人にとって望ましい行動――じっとする、静かにする、お利口にする、大人しくするといった行動を教える練習は、十分に発散した後に行うことが重要です。この順序を守ることで、日常の関わりは格段に進めやすくなります。
破壊者タイプの犬の生活で、とくに起こりやすい問題が「慢性的な発散不足」です。
なかでも「遊びのワンパターン化」は深刻で、活発な犬に強い欲求不満を生じさせます。
その結果、家具などへの破壊行動が増えたり、音に過剰に吠えたり、反対に過度に怯えるようになったり、さらには飼い主さんへの威嚇や攻撃行動が増加しやすくなります。
ここでよくいただく質問があります。
「もっとお散歩に連れて行けばいいですか?」
「もっと一緒に遊んであげればいいですか?」
外遊びとして散歩の回数を増やすことや、一緒に遊ぶ時間を持つことは、とても有効です。ただし、「ずっと遊び続けるわけにはいかない」という現実的な悩みも多く聞かれます。
そのような場合には、犬がひとりで行う「ひとり遊び」を見直してみてください。破壊者タイプの犬のひとり遊びで特に重要なのは、思いきり破壊できることです。
市販のおもちゃやベッドは「壊していい」と言いにくいものですが、紙資源や野菜など、買わなくても手に入る素材を一日一回与え、心ゆくまで破壊させてあげてください。
「破壊させたら乱暴にならないか」「破壊しないと気が済まなくならないのではないか」と心配されることもありますが、その心配は不要です。
むしろ逆です。
限られた環境の中で、飼い主さんが与えてくれた物を思いきり破壊できる経験は、飼い主さんへの愛情と信頼を育てます。また、破壊後は気持ちや行動が落ち着きやすくなり、結果として褒められる機会も増えていきます。
破壊による発散
→ 楽しい
→ 落ち着く
→ 褒められる
→ 嬉しい
→ 再び良い循環へ
一方で、発散が慢性的に不足すると、イライラやピリピリした状態が続き、いたずらや吠えが増え、叱られることで関係が悪化し、さらに不安定になるという悪循環が生じます。
大切なのは、まず「満たす」ことです。しつけやトレーニングは、その後に行いましょう。
もちろん、破壊だけをさせればよいわけではありません。散歩、ボール遊び、宝探し、外での探索など、飼い主さんと一緒に楽しめる活動を少しずつ増やしていくことが重要です。
その中の一つが破壊であれば、犬が乱暴になったり、破壊しなければ気が済まなくなることはありません。
破壊者タイプの犬には、一日一回、思いきり破壊を楽しめる時間を用意することを、ぜひ生活の習慣として取り入れてみてください。
以上が、あじな動物病院行動科代表 中西薫 からのご相談への回答です。
