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犬の行動とは何か|犬の「本当」を理解するために

行動って、なあに?
この問いから、犬の「行動」について考えてみたいと思います。

犬の行動とは、犬が見せるふるまいのこと

行動は、英語では、Behavior (Behaviour)。
ビヘイビア、と呼ばれます。
走る、座る、伏せる、しっぽを振る、吠える、などといった、犬がするいわゆる「ふるまい」のことを指します。
日本語では、行動、行い、ふるまい、動作、アクションなど、いろんな呼ばれ方をされますね。

なぜ、犬の性格ではなく行動を見るのか

近年、動物愛護および動物福祉への関心が高まる中で、犬の「行動」に焦点を当てて、犬という動物を科学的に理解しようとする動きが広がっています。

これはもちろん素晴らしいことに違いありませんが、でもなぜ「行動」なのだろうかと考えたことはありませんか?
なぜ、「性格」や「根性」などではなく、わざわざ犬の「行動」にスポットライトを当てるのでしょうか?

それは、犬がする行動は、その時の犬の心と体の状態、そして犬の本当の気持ちを、鏡のように映し出すものだからです。

犬の行動は、心と体の状態を映し出す道しるべ

犬は、「お腹が痛いから、そっとしといて欲しい。」とか、「あの犬ちょっと怖くて苦手。」というように、自分の状態や気持ちを、私たち人間に言葉で伝えることができません。
そんなとき、犬の行動をよく見ることで、その行動に映し出される犬の状態や気持ちを、正確に理解することが可能になるのです。これは素晴らしいことです。

本当の状態や気持ちを理解できれば、迷ったり戸惑ったり困ったり怯えたりしている犬を、どう導き教えたらよいか、助け方がわかるようになります。

行動から、状態と気持ちを理解でき、
状態と気持ちを理解できれば、助け方がわかる。
という具合です。

行動は、私たち人間が犬の本当の気持ちを理解し、彼らを助け導くための、貴重な道しるべなのです。

行動は、誰もが確認できる客観的な事実である

行動は、犬の本当の状態と気持ちを理解するための道しるべですが、それだけではありません。
行動が真に優れているのは、みんなが同じものを見て、確認して、見たものを共有できる、という点です。

たとえば、犬がインターホンに吠えています。この「インターホンに吠える」という犬の行動は、目の前で起こっている出来事で、みんなが(視力が必要ですが)見て、あの犬インターホンに吠えてるよねと共有しあえる、客観的な出来事、つまり事実です。

これに対して、犬の「性格」や、あるかどうかも定かではない「根性」みたいなものは、目に見えません。当然、みんなで共有することもできません。
また、目に見えないものは想像するしかないのですが、そのときに必ず、想像する人の経験や思いや願いといった超主観的な色づけが施されてしまいます。AさんとBさんで意見が異なる、なんてことも当然起こってきます。
これでは、犬の本当の気持ちは永遠に理解できません。

行動は、目に見える事実である。
行動は、誰が見ても同じ事実である。
行動は、客観的である。

そこには、人がどう思うか、どう感じるか、どうあって欲しいかといった、個々で異なるその人の経験や思いや願いといった主観的なものさしは必要ありません。

行動は、客観的なものであるからこそ、私たち人間の思いに振り回されることなく、犬の「本当」の状態と気持ちを伝えることができるのですね。だって、どう思うか、どんな気持ちかは、本来犬のものですからね。

犬の行動を科学的に見るとはどういうことか

行動は、私たち人間が、もの言えぬ犬の気持ちを理解するための、貴重な道しるべ。
行動をよく見ることで、犬の状態や気持ちを理解して、彼らを助けることができると述べました。

ですがもちろん、ただボーっと見ていれば理解できるわけではありません。
犬の本当の気持ちを理解するには、それなりの「行動の見方」を私たちが身につける必要があります。

ではその見方とは、いったいどんなものなのでしょうか?

犬の本当の気持ちを理解するための見方とは、「行動を科学的に見る」ということ。
科学的に見るとは、科学的根拠、つまり学問に基づいて見るということです。

身近な例で説明しますと、例えば、暑い日に犬と伏せの練習をしているとします。口をあけ舌を出してハアハア息をしている犬を見て、私を馬鹿にしてるのか!なんて怒ったりしませんよね?(そうでありますように。)
犬は人間のように汗をかいて体温調節ができないので、ハアハア息をすることで、口から熱を逃します。
それだけではありません。例えば人間の教え方が下手(!)なために犬が何をすれば良いかよくわからずストレスに感じると、自律神経系の交感神経の働きが活発になり、ハアハアと息が荒くなる場合もあるのです。

これらは、犬の体と体温調節機能、自律神経反応という科学的根拠を知っていれば、わかることです。この場合の学問は、獣医学および医学です。
ですが、知らなければ、人を馬鹿にしているとか、練習に集中していない、なんて誤解をしてしまうかもしれません。

「そんなことわかってるよ」的な身近な例で説明しましたが、実は同様の誤解は、驚くほどたくさん起きています。

例えば、「おいで」と呼んでも、すぐに全速力で真っ直ぐやってこないで、とぼとぼとわざと遠回りしてくる。これは私のことが嫌いだから?とか、例えば、「大好き」と言って顔を近づけると、顔を背けて大あくびをして、その後にわざわざお尻を向けてくるのは、私を嫌いと言っている?とか。
いかがですか?思い当たる出来事はありますか?

犬がどんな状態にあって、どんな気持ちで、何を言っているかを、その行動からなるべく正確に理解するためには、医学や獣医学、動物行動学や応用行動分析学などの学問を、科学的根拠として用います。
犬の行動の専門家はそれら学問を履修して、犬の行動を科学的に紐解き、依頼を受けた飼い主さんに説明しているのですね。
あじな動物病院行動科も、もちろんそうです。だから、犬の心と行動についてのご相談をお受けする科を、「行動科」と名付けました。

犬の行動を理解することは、犬を助けること

これまで、犬の「行動」に着目することと、その優れた点について、述べてきました。
犬の行動を科学的に見ればこそ、その行動に映し出される犬の心身の状態や本当の気持ちを、正確に理解することが可能になり、そして、彼らを導き助けることも可能になる。
その姿勢は、動物を主語において、その心身の幸せを考える、動物福祉の姿勢に他なりません。

最後に、チンパンジーの生態研究で知られた生物学者の故ジェーン・グドール女史が残した言葉を、ご紹介したいと思います。

“Only if we understand, can we care.
Only if we care, we will help. Only if we help, we shall be saved.”

  • Jane Goodall: 40 Years at Gombe (1999)

「理解してこそ、思いやれる。
思いやってこそ、救える。」

行動は、私たち人間が犬の本当の状態と気持ちを理解し、彼らを導き助けるための、貴重な道しるべです。

追伸、ここから、みなさんの、犬の行動、ドッグビヘイビアへの探究の旅が始まることを、心から願っています。

あじな動物病院行動科代表 中西薫

 

犬の行動に関する用語や定義は、「行動百花|行動のことば」で解説しています。

愛犬の行動について具体的な相談をご希望の方は、レッスンページをご覧ください。