はじめに
本コラムは、すでに雷を気にしている、または雷を怖がっている犬の飼い主さんに向けて書きました。
雷を気にしていない犬に、予防として行う内容ではありません。
犬が雷を怖がるのはなぜ?

愛犬とのお散歩や外出を爽やかに楽しめる5月が終わると、日本列島には雨の季節がやってきます。
雨の季節はお散歩に行きにくくなって憂鬱ですが、昨今、犬の飼い主さんの心配事はそれだけではありません。
そうです。雨とともに、愛犬が怖がる雷の季節もやってくるからです。
雷は、犬という動物にとっては、生まれつき怖いものです。これを「生得的脅威」と呼びます。
もちろん個体差もあり、不思議と雷が平気な犬もいますが、ほぼすべての犬にとって雷はとても怖いものだと思って間違いありません。
それにもかかわらず、どんなに愛犬を雷から守りたくても、私たち人間が雷を弱めたり消し去ったりすることはできませんし、また、いつ雷が鳴るかを完璧に予測することもできません。そして、雷から避難することも、現実問題いつもはできません。
愛犬が雷を怖がるのは、いわば当たり前のことと言えるかもしれません。
あじな動物病院行動科のレッスンにも6月頃から、雷を怖がる愛犬についてのご相談が毎年多く寄せられます。
雷を怖がる犬が見せる、震える・吠える・隠れるなどの様子

あなたの愛犬は、現在雷を怖がっているでしょうか?
怖がっているとしたら、どんな様子で怖がっていますか?
ブルブル震える
ハァハァあえぐ
よだれをたらす
クンクン鳴く
ワンワン吠える
飼い主さんにつきまとう
ウロウロ歩きまわる
物かげに隠れる
尿や便をもらす
パニックを起こして走りまわる
など、
これらは、実際に雷を怖がっている犬が見せる様子です。

いずれも、愛犬が心から雷を怖がり引き起こされている脳と体の反応で、犬自身がやろうと思ってやっているわけではありません。
ですから、例えば叱ってやめさせようとしても全く効果はありませんし、むしろますます雷が怖くなるだけで逆効果です。
必要なのは、なんとかしてやめさせようとするのではなく、どうしたら、少しでも反応しないですむようになるかを考えること。
つまり、今鳴っている雷を愛犬が少しでも怖く感じないですむように、何ができるかを考えることが大切です。
そうは言っても、実際に暗雲が垂れこめた空に稲光が走り、雷鳴が轟いて愛犬が怖がり始めてからだと、考える余裕なんてありません。
そこで、本コラムでは、雷が鳴って愛犬が怖がっているとき、飼い主さんが愛犬のためにできる対処法をご紹介したいと思います。
犬が雷を怖がっているときに飼い主さんができる5つの対処法

今まさに雷が鳴って、愛犬が怖がっている。どうしよう。
そんなときは、以下にご紹介することを、ご紹介する順に、確認してみましょう。
1、まず飼い主さんが深呼吸して落ち着こう。
2、少しでも雷の刺激を小さくしよう。
3、愛犬に逃げ場をつくろう。
4、愛犬が会いに行ける場所にいよう。
5、食べられる大好物があれば、あげてみよう。
1、まず飼い主さんが深呼吸して落ち着こう。

愛犬にとって一番頼りになる存在の飼い主さんが緊張していると、愛犬もさらに緊張します。
まず深呼吸して、落ち着きましょう。雷は時間が経てば必ず止みます。
好きな音楽や映画を流すなど、飼い主さんがリラックスできるように環境を整えてみるのも効果的です。
また、お肉を煮たり焼いたりして、お部屋においしそうなにおいを漂わせるのもおすすめです。
2、少しでも雷の刺激を小さくしよう。

家の中ですごす部屋を移動できるなら、少しでも稲光が見えない、雷鳴が聞こえない部屋へ、愛犬とともに移動しましょう。
移動することができないなら、カーテンを引く、雨戸を閉めるなどして、同じく雷が見えない、聞こえないよう工夫しましょう。
ときどき、雷に慣れさせようとして、雷がよく見え聞こえる部屋で、愛犬に雷を体験させようと頑張られているケースがありますが、これは完全に逆効果です。愛犬は雷に慣れることができないから、怖がっています。体験させればさせるほど雷が怖くなってしまうので、いますぐやめましょう。
3、愛犬に逃げ場をつくろう。

雷が鳴っている間、少しでも落ち着いてすごせるためには、家の中のどこなら一番落ち着くかを愛犬に決めさせてあげるのが、実は一番効果的です。
安全にすごせる場所であれば、「絶対リビングにいさせる」などのように決めず、愛犬が家の中を移動して居場所を探せるようにしてあげましょう。
2で、雷に慣れさせようとして、雷がよく見え聞こえる部屋で愛犬をすごさせるのは逆効果であると述べました。これと同じく、ハウスやクレートの中にいさせると人間が決めて、扉を閉め鍵をかけてハウスやクレートの中で強制的にすごさせることも、逆効果です。
どこなら落ち着けるかを決められるのは、愛犬だけです。
可能な範囲で、愛犬が落ち着く場所を求めて移動できるようにしましょう。
4、愛犬が会いに行ける場所にいよう。

「愛犬の居場所はわかった。けど、私はどこにいたらいい?何をしてあげたらいい?」
飼い主さんから多くいただくご質問です。
飼い主さんが側にいたほうが、例えば震えがおさまるなど愛犬の不安が明らかにやわらぐのであれば、雷が鳴っている間、愛犬の側にいてあげるとよいでしょう。
ですが現実的に、ずっと愛犬の側についていられない場合も多くあります。
そんな場合は、愛犬が必要なら会いに来られるようにして、飼い主さんは愛犬から居場所がわかるところにいるようにすれば、大丈夫です。
抱っこしたり、撫でたりさすったりしたほうがよいのかという対応についても同様に、そうしたら愛犬が落ち着くのであればしてあげてもよいですが、ずっとしていなければ不安が悪化するというわけでは必ずしもありません。
大事なことは、飼い主さんがある程度落ち着いていること。1です。
深呼吸したら、どこでどうしていたら愛犬の不安がやわらぐのか、まずよく見てみましょう。
5、食べられる大好物があれば、あげてみよう。

雷は犬にとっては本能的に怖いものです。
その恐怖が少しでもやわらぐように、もし愛犬の大好物で、雷が鳴っているときでも食べられるものがあれば、愛犬にあげてみましょう。緊張しているので、干し肉などの乾物ではなく、クリームチーズなど水分があるもののほうが一般的に食べやすいと言われています。
緊張が強くて食べられない場合は、無理に食べさせる必要はありません。
また、これまで食べたことがない食べ物を与えるのは、緊急時で体調を崩しやすくなるため、やめておきましょう。
食べられそうなら与えて、雷の恐怖や不安をやわらげてみるとよいでしょう。
雷が鳴っているとき、愛犬の恐怖をやわらげるために確認しておきたい5つの対処法をご紹介しました。
いかがでしたか?
確認していなかったことや、迷っていたことなどはありましたか?
雷を怖がる犬の様子を動画で記録しておこう

雷が鳴っているときに愛犬の恐怖や不安をやわらげるための5つの対処法を確認したら、その後でぜひやっておいていただきたいことがあります。
それは、雷を怖がっている愛犬の様子を、スマートフォンなどで動画を撮影しておくことです。
怖がっている愛犬にスマートフォンを向けるなんて、と思われるかもしれません。
ですが、愛犬がどれくらい雷を怖がっているかを動画に記録しておくことは、今現在の状態を確認するための貴重な材料になります。
雷は待てば止みますが、なくなることはありません。また必ず愛犬の頭上で鳴り響きます。
そのときに、愛犬が雷をもっと怖がるようになってしまっているのか、つまり悪化しているのかを判断するために、動画を撮って残しておくことが必要です。これは、愛犬の怖がりの度合いが、「雷恐怖症(Thunder Phobia)」という犬の行動疾患(行動の病気)へ進んでしまうことを防ぐためにも、非常に重要なことです。
5つの対処法をすべて確認して、愛犬の不安や恐怖を少しやわらげたら、5分程度でかまいません。雷を怖がる愛犬の様子を、動画に撮影して記録に残しておきましょう。
犬の雷恐怖症について、知りたい方はこちら
2025年行動科セミナー 「あじな夏の特別講義 雷恐怖症から愛犬を守る」
雷・大雨・強風を怖がる犬に困っている飼い主さんへ

このコラムは、今まさに雷が鳴って愛犬が怖がって、困っている。そんな飼い主さんに向けて、書きました。
雷の最中に使える「救急箱」として、使ってもらえたら幸いです。
飼い主さんと愛犬が、少しでも落ち着いて雷をやりすごせることを、心から願っています。
また、次のコラムでは、雷が鳴っていない日に、愛犬が雷を怖がらなくなるために飼い主さんができることについて、ご紹介したいと思います。
雷、大雨、強風などの自然現象を愛犬がひどく怖がって困っている。
そんな飼い主さんは、一度ご相談ください。
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「あじな雷外来2026」

あじな動物病院行動科 中西薫
この記事を書いた人
中西薫
あじな動物病院行動科代表。
北海道大学獣医学部入学後、同大学を自主退学。「攻撃行動の治療家」を目指し、国内外で犬の行動について学ぶ。2014年、広島県廿日市市にあじな動物病院行動科を開設。
犬の行動(Behavior)を専門とし、一般にしつけやトレーニングと呼ばれる犬の教育を、行動の科学的解析と評価に基づき、行動形成トレーニング、行動療法トレーニング、行動治療としてレッスン現場で指導している。
あじな動物病院行動科 中西薫について
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