犬が散歩中に他の犬に吠える悩みは多い
「散歩中に会う他の犬に吠えて困っています。」
これは、院内レッスン、オンラインレッスンに関わらず、レッスンにお越しになる飼い主さんほぼ全員から寄せられるご相談です。
散歩中の他犬への吠えは、詳細は違えど、
「愛犬が散歩で他の犬を見たら吠える。」
「吠える犬と吠えない犬がいて、違いがわからない。」
「吠えるときと吠えないときがあって、予測ができない。」
「毎日ドキドキ、ヒヤヒヤしながら散歩に行っている。」
「とにかく他の犬を避けて、細い裏路地みたいなところばかりを散歩している。」
「吠えるから、みんなに避けられて、悲しい。」
「散歩に行くのが憂鬱だ。」
など 、どのご相談も、そのお悩みは切実です。
あなたの愛犬は、散歩中どんなふうに吠えて、あなたを困らせているでしょうか?
犬が他の犬に吠えるのは攻撃的だから?

散歩中に会う他犬に吠えて困っている飼い主さんは、とても多いです。
そして同時に、飼い主さんが、「うちの犬は特別攻撃的なのだろうか?」「特別攻撃性が高いのだろうか?」と心配される場合も、とても多いです。
ほぼ全てのケースで、散歩中に出会う他犬に吠えることと、その犬のいわゆる生まれ持った攻撃性が特別高いことには、直接的な関係がありません。
もちろん、犬種によって、他犬を受け入れる寛容さの度合いに違いはありますし、犬が一頭一頭生まれ持った、いわゆる性格にも違いはあります。
ですが、一般家庭で育てられている家庭犬が、犬具を着けて、一般的な住宅街で散歩する時に起こる他犬への吠えについては、「性格が攻撃的だから」は該当しない場合が圧倒的に多いです。
では、攻撃性が高いから吠えるのではないとしたら、一体何が原因なのでしょうか?
あなたの愛犬は、なぜ吠えるのでしょうか?
犬が散歩中に他の犬に吠える理由

あなたの愛犬が散歩中、他の犬に吠えるのは、特別に攻撃的な性格だからではないとお話ししました。
では、なぜ他犬に吠えるのでしょうか。
愛犬は、どんな気持ちで他犬に吠えているのでしょうか。
実際のレッスン現場で見られるケースを、できるだけわかりやすく、下記に挙げてみたいと思います。
なお、末尾に※をつけたものは、特に多く見られるケースです。
発散不足や興奮によるもの

- 毎日暇で、気力も体力も持て余していて、とにかく吠える(発散不足と呼ばれる状態)※
- とにかく関わりたくて、吠える
- とにかく遊びたくて、吠える
- 生まれつきよく喋る(吠える)性格で、吠える
- よく喋る(吠える)ように育てられて、吠える※
- 興奮しやすくて、吠える※
- 興奮すると、一気に最高テンションまで興奮してしまい、吠える
他犬との経験や、これまで学習した内容によるもの

- 犬に嫌な経験をしたことがあって、吠える※
- 犬にトラウマがあって、吠える
- 犬を知らないから、吠える※
- 犬との付き合い方を知らないから、吠える※
- 犬との触れ合いが足りないから、吠える※
- 先住犬が他犬に吠える様子を見て学習して、吠える
発達や性ホルモン、身体の状態に関するもの

- 思春期で、吠える(生後半年位~一歳の性成熟頃)
- まだ幼くて、吠える(生後半年位~三歳の社会的成熟頃)※
- 女性ホルモンの変動期で、イライラしやすくなっていて、吠える(性ホルモンの影響)
- 女性ホルモンの変動期にある雌の犬に、性的な興奮をして、吠える(性ホルモンの影響)
- 痛かったり痒かったりして、イライラしやすくなっていて、吠える(身体の不調)※
- ホルモン疾患などで、イライラしやすくなっていて、吠える(身体の不調)
不安、葛藤、怖さなど気持ちによるもの

(一部、これまでご紹介したものと重複しています。)
- 飼い主さんとの生活でストレスを抱えていて、イライラしやすくなっていて、吠える(心の不調)※
- 不安である※
- どうしたらいいかわからない※
- 会ってみたいが、不安でもある(葛藤)※
- 怖い※
- 嫌だ※
- 追い払いたい
- 今は関わりたくない※
どうですか?
「犬の性格が特別攻撃的だから」という理由は置いておいても、実にさまざまな理由による吠えがあることに、驚かれたのではないでしょうか。
これらはすべて、他犬への吠えを解決するレッスン現場で、実際にあるケースです。
あなたの愛犬に当てはまると思われるケースは、ありましたか?
「うちの愛犬、特別に攻撃的だから吠えるわけじゃなかったんだ」と思っていただけたら、行動科の案内人として幸いです。
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犬に慣れてほしいとき、散歩中に他の犬と会わせることについて考えた行動コラムです。
犬が他の犬に吠える理由はどう見わける?

犬がなぜ他犬に吠えるのか、どんな気持ちで吠えているのかを、実際のケースでご紹介しました。
では、あなたの愛犬がなぜ吠えるのか、どのケースに該当するのかを、どう見わけたらよいのでしょうか?
犬の行動の専門家は、下記のような情報から、犬の行動や情動(感情のこと)を科学的に分析します。
- 犬の心身の基本情報(犬種、性別、年齢、避妊去勢の有無や時期、健康状態、これまでの生育及び飼養環境など)
- 犬がする行動
- 犬の身体の様子(姿勢や、立毛などの詳細)
- 犬の表情(目など各部位の様子や、筋肉の緊張状態などの詳細)
- 呼吸
- 舌などの色
- 足裏の発汗
- よだれや尿などの排出物
など
これらの情報は主に、自律神経反応と呼ばれる生きものの反応と、ボディランゲージと呼ばれる犬科動物に特有のコミュニケーションから成っていますが、これらの情報を、散歩中に犬を連れている飼い主さんがご自分で観察し、解析し、愛犬が吠える理由を解き明かすのは、大変に困難で、ほぼ不可能と言わざるを得ません。
ですから、犬の行動から、「本当」の気持ちと理由を解き明かし、飼い主さんにお伝えするレッスンを、あじな動物病院行動科では行っています。
犬が他の犬に吠えるとき、飼い主の焦りは関係する?

愛犬が散歩中に他犬に吠えるその気持ちと理由、
レッスンでは、それらを科学的にひも解き、飼い主さんにお伝えすることについてご紹介しました。
散歩中に突然愛犬が他犬に吠えると、多くの飼い主さんが、驚き、どうしていいかわからず焦ってしまうと仰います。
なぜ吠えるのか、わからない。
吠えたときにどうしたらいいのか、わからない。
これからどうしたらいいのか、わからない。
わからないことが、飼い主さんを焦らせ、ますます不安にさせます。
わからないことは、辛いことです。
それだけではありません。
わからないから焦ったり不安になったりして、飼い主さんの気持ちが不穏になると、隣にいる愛犬にその不穏な感情が伝わり、愛犬の気持ちも同じように不穏になってしまいます。
これは、動物行動学で、情動伝染(Emotion Contagion)と呼ばれる、犬特有の現象です。
先に挙げた他犬に吠える犬のケースを振り返ってみてください。
飼い主さんの不穏が移って犬が不穏になったら、ますます酷く吠えるようになるものばかりだと思いませんか?
愛犬が吠えずにすむためには、まず、リードを握った飼い主のあなたが焦らずにすむことが、大切です。
焦らずにすむためには、愛犬の気持ちと理由、吠えるときの対処、そしてこれからどうしたらいいかを、飼い主のあなたが知ることが、必要です。
犬が他の犬に吠えたときの対処法

飼い主の私が焦ったら、それが愛犬に伝染して、愛犬がもっと吠えるようになる。だから、焦らないことが大切。
うん、それはわかった。
で、吠えたら、一体どう対処すればいいの?
ここまで読んでくださった飼い主のみなさんのお声が聞こえてくるようです。
無難な対処の仕方について、下記にその一例をご紹介したいと思います。
散歩中に会った他犬に愛犬が吠えたときは、以下のように対処してみてください。
コツは、焦ったり緊張したりしていることを、愛犬になるべく気づかれないよう、淡々と行うことです。
散歩中に愛犬が他犬に吠えたときの、無難な対処の一例
- まず、愛犬が伸びたリードの先で右往左往しなくてすむよう、リードを短くする
- 愛犬の鼻先に、大好物(※ここがポイント)のおやつをひとにぎり握って、持っていく
- 握った大好物のおやつを食べさせながら、愛犬の顔を他犬と反対方向に誘導する
- そのまま他犬から離れた場所に連れて行く
- 大好物のおやつを食べ終わったら、淡々と、他犬から離れる方向へお散歩を再開する
(もし3で、大好物のおやつを食べさせながらの移動が難しい場合は、握った大好物のおやつを愛犬の顔の下の地面にまいてください。愛犬の意識が他犬から地面にまかれた大好物のおやつに移って、食べ始めれば、成功です。そのまま、地面に大好物のおやつをまきながら、他犬から離れましょう。)
加えて、相手の飼い主さんに「吠えてごめんなさい。」と声がけされる場合は、なるべく穏やかな表情と声を心がけてください。慌てると、愛犬も慌てます。
無難な、つまり、少々やり損ねてしまったとしても、愛犬にも飼い主さんにも、そして、相手の犬にも飼い主さんにも害のない対処をご紹介しました。
ですが、これは文章で紹介できる、あくまで一例に過ぎません。
あなたと愛犬に最も適した対処をお知りになりたい場合は、どうぞレッスンにお越しください。
犬が他の犬に吠えないようにするには?

愛犬が吠えたときに焦らないために、飼い主さんが愛犬の吠える気持ちと理由を、そして吠えたときの対処を知ることが大切であると、お話ししました。
くわえて、愛犬が他犬に吠えないようになるために、もうひとつ大切なことがあります。
それは、「吠えるかわりに、どうしたらよいのかを、愛犬にわかるように教えること」です。
そう、教育です。
犬がする行動が、人間にとって不都合だったり迷惑だったりすればするほど、私たちはつい、犬に「そうしてはだめ」「こうしてはいけない」と教えようと躍起になってしまいます。
ですが、「散歩中に犬に吠えてはいけない」と犬にわからせようと必死になっても、そもそも言葉で伝えることができない犬にはうまく伝わりません。それどころか、先ほどご紹介した情動伝染によって、飼い主さんの尋常でない必死さだけが伝わってしまい、犬はますます興奮したり、飼い主さんをこんなに必死にさせる相手の犬はやはり良からぬ存在なのだと勘違いをしたりしてしまうことの方が、実際多いのです。これでは、吠えは良くなりようがありません。
「散歩中に吠えてはいけない」を愛犬に伝えようとしても、効果はほぼなく、飼い主さんも疲れ果ててしまいます。
では、どうしたらよいのでしょうか?

散歩で他犬に会うことは、完全にはなくせませんし、どの他犬に会うかも、完全には選ぶことができません。
ですが、他犬に会ったときに、どう振る舞ったらよいかを、愛犬に教えることはできます。
正確には、他犬に会ったときに、吠えるかわりに、どう振る舞ったら、飼い主さんが心から褒めてくれて、ご褒美をくれるのかを、愛犬に喜びとともに教えるのです。
これは、代替行動分化強化と呼ばれる、行動を無理なく変えるための、科学的な手法です。
これまでは、散歩中に他犬を見たら、吠えて飼い主さんを困らせていた愛犬が、散歩中に他犬を見たら、例えば、飼い主さんの前に来て、飼い主さんの目をじっと見る(アイコンタクト)ようになる。そうすると、飼い主さんが「いいこ!」と褒めて、このときにしか与えない大好物のおやつを愛犬に与える。(注:これは、吠えるかわりにどう振る舞うかの一例です。散歩中に他犬に吠える犬全頭をこう教えるというわけではありません。それぞれに教える行動は異なります。)
他犬に吠えても、飼い主さんに褒められもしないし、大好物のおやつをもらえもしないけれど、吠えるかわりに、飼い主さんの前に来て、飼い主さんを見つめたら、褒められて、大好物のおやつをもらえる。
これはつまり、他犬が現れたときに、どう振る舞った方が良いことが起こるのか、結果的に得なのかを、犬に教えるということです。
必要なのは、「吠えてはいけない」ではなく、「吠えるかわりに、どう振る舞ったらもっと良いことが起こるか」を、教えることなのです。
もちろん、犬にとってもこの方が圧倒的にわかりやすく、意図せぬ誤解をさせる心配もありません。教える飼い主さんが必死になる必要もないため、飼い主さんも愛犬も安心して楽しむことができることも、この教え方の優れたところです。
犬の散歩中の吠えはレッスンで治せる

愛犬が散歩中に他犬に吠えて困っていて、吠えなくなるようにしたい?
ならばまず、愛犬がどんな気持ちと理由で吠えているかをわかることが必要であり、次に、「吠えてはいけない」ではなく、「吠えるかわりに、どうしたら、もっと良いことが起こるのか」を愛犬に教えることが必要であるとお話ししました。
いかがでしたか?
あなたの愛犬が散歩中に他犬に吠えてしまうお悩みに、解決の光はさしてきたでしょうか?
解決に必要なのは、「本当」の気持ちと、理由と、教育です。
でも、それをあなたがひとりで全部やるのは、もちろん非常に困難なことです。
そのために、行動の専門家が案内するレッスン、あじな動物病院行動科のレッスンはあります。
愛犬も自分のことも責めなくていい、愛犬が吠えるたびに焦らなくていい、そして、愛犬を「吠えてはだめ!」と疲れるまで叱らなくていい。でも同時に、「もうなおらないんだ。」と諦めなくていい。
それがどれほど、心休まることかを、想像してみてください。
そして、何を目標に、何を、何のために、いつまで、愛犬と笑顔で練習したらいいかを、飼い主のあなたが「わかっている」ことが、どれだけ安心できることかも、想像してみてください。
最後に、なにより、「いいこ!」と笑って愛犬を褒めて教えることが、どれほど楽しいことかを、想像してみてください。
そうです。今感じられているその喜びが、犬を教えるということ、教育の本当の素晴らしさなのです。
ようこそ。
ここは愛犬の「本当」に出会える場所
あじな動物病院行動科です。

あじな動物病院行動科代表 中西薫
この記事を書いた人
中西薫
あじな動物病院行動科代表。
北海道大学獣医学部入学後、同大学を自主退学。「攻撃行動の治療家」を目指し、国内外で犬の行動について学ぶ。2014年、広島県廿日市市にあじな動物病院行動科を開設。
犬の行動(Behavior)を専門とし、一般にしつけやトレーニングと呼ばれる犬の教育を、行動の科学的解析と評価に基づき、行動形成トレーニング、行動療法トレーニング、行動治療としてレッスン現場で指導している。
あじな動物病院行動科 中西薫について
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「お散歩で出会う犬に急にガウガウして困ってしまう」
この飼い主さんから寄せられたご相談に、お散歩とお友達作りについての考え方、お散歩での練習の行い方を、Instagram投稿全三作にてお答えしています。
あじなで犬の行動の「本当」に出会う|ご質問によせて
「お散歩で他犬を見てガウガウしてしまう犬に、ご褒美おやつをあげながら、ガウガウしないですむように練習しているけれど、うまくいかない」
この飼い主さんから寄せられたご質問に、Instagram投稿前後編にてお答えしています














