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愛犬に友達を作ってあげたいとき、散歩で犬と会わせるべきか

この記事は、中西薫の行動大全「犬の行動の臨床プロセス|観察・評価・教育」を補う行動コラムです。

「散歩中、他犬を見ると近づこうとして引っ張ります。あいさつをさせると、上手くいっているように見えても、急に唸ったりガウガウしてしまうことがあります。愛犬にお友達を作ってあげたいのですが、散歩で会う犬と関わらせた方がよいのでしょうか。」

先日、レッスンでこんなご質問をいただきました。
これは実は、レッスンに限らず、犬の飼い主さんから広くいただく、いわば「永遠のご相談」です。

あじな動物病院行動科では4月、コラムやインスタグラムの投稿などで、このご相談にお答えしていこうと思います。

愛犬に友達を作ってあげたい

さて、
「愛犬に気のおけない友達を作ってあげたい」
これは、飼い主さんの切実な願いです。

そんな飼い主さんが次に抱くのが、
「でも、どうやって作ればいいの?」
という疑問です。

当然のことですが、愛犬に犬の友達を作ってあげるためにまず必要なことは、愛犬を他の犬と会わせることです。
会わせてみないことには、気が合うかどうかは分かりません。

では、どこで会わせるか。
一番手近なのは、やはり毎日のお散歩です。

散歩で犬を会わせると何が起こるか

お散歩に出かけて、見かけた犬と愛犬を会わせてみる。
お互い興味がありそうにするから、それではと近づけてみる。
鼻を近づけてにおいを嗅ぎ合って、「こんにちは」と挨拶を交わしているのかなと微笑ましく思っていたら、次の瞬間、急にガウガウッとファイトが始まってビックリ。心臓に悪い。

相手が悪かったのかなと思い、今度は他の犬と会わせてみると、同じように急にガウガウすることもあれば、しないこともある。
理由がさっぱり分からない。
そもそも、「お友達」ってどういう相手なのか。
飼い主さんの謎は深まる一方です。

この相談を三つに分けて考える

ここで、ご相談を今一度整理してみると、
ご相談は、

・愛犬に犬の友達を作ってあげたい
・犬の友達を作るために、散歩で犬と会わせるべきか

という内容です。
これを三つの観点から、改めて考えてみたいと思います。

「友達」とは何か

一つ目は、「友達」です。

友達とは、愛犬にとっての気のおけない相手のこと。
つまり、愛犬が心から安心して関わり、時に共に遊ぶことができる相手です。

誰がその相手になれるのかを、私たち人間が決めることはできません。
決めるのは、愛犬です。
ですから結局のところ、会わせてみないと分かりません。

友達を必要としているかどうか

二つ目は、友達を必要としているかどうかです。

これは、愛犬の現在の心と体の状態と、これまで置かれてきた状況によって異なるため、Yes/Noで即答できるものではありません。

犬という動物の種とその進化という背景情報を考えると、犬は、ソーシャルアニマル、つまり社会性を持ち、その社会性を駆使して生き抜いてきた動物です。

ですから、「その犬が心身ともに健康である場合、全ての犬に、同種動物である犬と安心して関わる機会が日常的に提供されるべきである」と言えます。

言い換えると、愛犬に犬の友達が必要な状況である場合は、友達を作ってあげることで、愛犬のQOL(生活の質、幸福度)を高めてあげることができる、ということです。
ですが、これはあくまで、愛犬が「友達を必要としている」場合に限ります。

散歩で犬と会わせるべきか

三つ目は、友達を作るために、散歩で犬と会わせるべきかです。

二つ目と違い、こちらははっきりと答えることができ、答えは「No」です。
愛犬に友達を作るために、散歩で他犬と会わせる必要はありません。

なぜでしょうか。
理由は、散歩で出会う犬は不特定多数の犬であり、皆それぞれに様々な事情を抱えているからです。

散歩で出会う犬が皆、友達との関わりを求めているわけではありませんし、その犬にとって今が友達を作るタイミングではないかもしれません。

例えば、母犬と早期に引き離されたことで、強い不安、時に恐怖を抱えながら懸命に生きている犬もいます。

例えば、子犬の頃、骨折の治療のため家の中で安静にするしかなく、他犬と触れ合う機会が失われたため、他犬との付き合い方を知らず、強い葛藤を抱えている犬もいます。

例えば、様々な理由により、他犬に対して警告なく突然攻撃することを覚えてしまった犬もいます。

上記はすべて、中西薫があじな動物病院行動科で、その行動の治療および変容を担当してきた実際の事例です。

友達になるのは愛犬である

実際に友達を作るのも、友達になるのも、人間である飼い主さんではなく、愛犬です。

友達になるためには、相手を見て、嗅いで、挨拶を交わし、相手の存在を許し受け入れ、相手を遊びに誘い、相手から遊びに誘われ、実際に一緒に遊び、楽しかった、面白かった、心地良かったと感じた、という一連の経験を重ね、「学習」をする必要があります。

散歩で会う犬みなが、「学習」の準備ができているわけではない。
それが、散歩の実情です。

散歩での友達作りが逆効果になる理由

「学習」の準備が今はまだできていない犬とはつまり、心身にストレスを抱えていたり、犬に対して強い不安や恐怖、葛藤といったネガティブな感情を抱くに至った、いわばトラウマと呼べるような体験をしてきた犬のことです。

そういう犬に、散歩でいきなり「うちの子と友達になってください」と頼むことには無理があり、愛犬に友達を作ってあげるどころか、愛犬が犬にトラウマ体験をし、犬嫌いになってしまう原因を作ってしまうことになりかねません。
また、酷く嫌な体験をするのは、相手の犬も同様です。
結果的に、誰のためにもならない場合も少なからずあるのです。

散歩と友達作りは分けて考える

大事なことは、二つです。

1、散歩は、様々な事情を抱えた不特定多数の犬がいる屋外を、リードを着けて飼い主と歩く機会であるから、友達になれるかを根拠なく試さないこと。

2、友達は、散歩ではなく、お互い「学習」の準備が整っている相手と、犬たちが主導で良い経験を積み重ねることができる場で、作ること。
(というよりも、結果的に、友達になった、できた、という方が近いかもしれません。)

友達を作るために、散歩で出会う犬に愛犬を頑張って関わらせる必要はありません。
散歩では、たくさんの刺激が溢れる中でも、飼い主さんと楽しく自信を持って歩けるように、教えた方が便利です。

友達作りは、もし必要な状態なのであれば、双方の犬が安心できる環境と相手を選び、お互いが楽しい体験をできるように準備することが大切です。

友達作りと散歩を分けて考えることが、愛犬にとっても相手の犬にとっても、本当の「友達」となるための、欠かせない第一歩です。

よくある質問

愛犬に友達を作ってあげたい時、散歩で犬と会わせるべきですか。

友達を作ることを目的として、散歩で出会う不特定多数の犬と会わせる必要はありません。

散歩で会う犬と関わらせると、なぜ逆効果になることがありますか。

散歩で出会う犬はそれぞれに事情を抱えており、友達との関わりを求めていない場合や、その準備が整っていない場合があるからです。

友達作りと散歩はどう考えればよいですか。

散歩は飼い主と楽しく歩けるように教える場として考え、友達作りは別に分けて考えることが大切です。

あわせて読みたいページ

犬の行動を観察・評価・教育という流れで整理したい方は、
犬の行動の臨床プロセス|観察・評価・教育
もあわせてご覧ください。

行動が変わる仕組みそのものについては、
犬の行動が変わる仕組み
もご覧ください。

中西 薫
あじな動物病院行動科代表
広島県出身
1999年 北海道大学獣医学部入学
2005年 同大学自主退学
「攻撃行動の治療家」を目指し国内外(イギリス、ベルギー、トルコ、デンマーク、アメリカ、オランダ)で修行
2014年 あじな動物病院行動科開設
    (広島県廿日市市)