犬に落ち着くことを教えるとは、興奮しないように抑えることではなく、
「どう振るまえば、望むものが得られるか」を犬に教えることです。
犬は、自ら動きを止める、座る、伏せるといった行動によって、
望む結果が得られると学習することで、落ち着いて行動できるようになります。
「どうしたら落ち着ける犬になりますか?」
愛犬が興奮して落ち着きがないと飼い主さんが感じられる場面は、日常の中に多くあるのではないでしょうか?
今回は、
「どうしたら落ち着ける犬になりますか?」という飼い主さんからのご質問に、
愛犬に落ち着くことを教える方法を実技を交えてお伝えしているレッスンの動画とともに、お答えしていきたいと思います。
フル動画はこちらからご覧いただけます。
動画のヨークシャーテリアのNちゃんは、
飼い主さんと日常的に楽しく行動形成トレーニング(注)をしていて、
トレーニングも、その中でもらえる食べ物のご褒美も、大好きです。
(注)行動形成トレーニングとは、
飼い主さんが出した合図で、愛犬が特定の行動をして、
その行動を、飼い主さんが褒めて、愛犬が喜ぶご褒美をあげる、
この一連の活動と遊びのことです。
行動形成トレーニングについては、詳しくはこちらをご覧ください。
なので、飼い主さんが行動形成トレーニングの準備を始めると、
どうしてもソワソワ興奮して、動きまわったり、飛びついたり、時には吠えたりします。
飼い主さんは、「いつも興奮してしまって、落ち着かないんです。」「うちのこ、落ち着きがないんです。」とお困りのご様子です。
行動形成トレーニングに限らず、おもちゃ遊びやごはん、お散歩など、愛犬が大好きで、待ち望んでいることをしようとすると、
愛犬が興奮して、手がつけられなくなる。
これは、多くの飼い主さんから寄せられるお悩みです。
大興奮している愛犬を、なんとか落ち着かせようとするけれど、
さらに興奮するだけで、一向に落ち着く気配がない。
仕方ないから、トレーニングを始める、遊び始める、ごはんをあげる、お散歩に出かける。
こう対処されている場合が、ほとんどではないかと思います。
犬の落ち着きがない原因とは?興奮は悪いことか
飼い主さんが大好きなことをしてくれる時に、愛犬が嬉しくって興奮することは、
それが、動きまわることでも、飛びつくことでも、吠えることでも、
それ自体は少しも悪いことではありません。
愛犬はその喜びを、体をめいっぱい使って表現しているだけです。
むしろ、飼い主さんと過ごす犬生を考えると、
飼い主さんが、自分の大好きなことをしてくれるということは、
愛犬の飼い主さんへの愛情を深め、信頼という絆を強めてくれる、良いことです。
ですから、愛犬が嬉しい時楽しい時に興奮してしまうということで、
飼い主さんがご自分を責めたり、愛犬に落胆したりする必要は、まったくありません。
でも、もちろん、愛犬が興奮して動き回ると、飼い主さんは大変です。
「愛犬に落ち着くことを教えたい」
「愛犬を興奮しても落ち着ける犬にしたい」
これは、犬の飼い主なら、誰しも一度は願うことです。
レッスンでは、
どのように接したら、愛犬に「落ち着く」ことを教えられるかを、
行動形成トレーニングの実技をお見せしながら、お伝えしました。
犬の興奮を抑えようとすると失敗する理由
愛犬が嬉しくて楽しくて興奮しているとき、
ほとんどの場合、私たちは、「興奮しないこと」を必死に教えようとします。
ですが、「興奮しないこと」「興奮してはだめなこと」を愛犬に教えようとすると、うまくいきません。
大抵の場合は、失敗して、愛犬がますます興奮するようになってしまいます。
これでは本末転倒です。
では、どうすればいいのでしょうか?
愛犬に落ち着くことを教えることは、とても簡単です。特別な場所も、道具も、テクニックも必要ありません。誰でもできます。
ただし、教えるためには、ひとつ、とても重要なポイントがあります。
それは、教える側が、「なにを教えるか」をわかっていることです。
犬に落ち着くことを教える方法|大切なポイント
教える側がわかっていなければならないこととは、
「興奮しないこと」ではなく、
「なにをすると、欲しいものがもらえるか」ということを愛犬に教える、ということ。
言い換えると、「興奮するのではなく、どう振る舞えば欲しいものがもらえるか」を愛犬に教える、ということです。
これを、動物の行動学の言葉では、How-To-Behave 振る舞いを教える、と表します。
嬉しくて楽しくて、興奮して、動きまわっても、飛びついても、吠えても別に良いのですが、
それでは、飼い主さんから望むものは得られません。
トレーニングでも、遊びでも、ごはんでも、お散歩でも、
飼い主さんが自分の望みを叶えてくれるためには、自分はどう振るまえば良いのか。
それを教えるのが、愛犬に落ち着くことを教える、ということです。
私たちが愛犬に望む「落ち着いた」振るまいとは、具体的には、
じっと立つ、座る、伏せるなどの、愛犬が自らの動きを止める行動のことですから、
愛犬が興奮している時は、かまわず静かに待って、
興奮している愛犬が自ら動きを止めたら、
そのタイミングで褒めて、愛犬が望むものを与えれば、良いのです。することは、たったこれだけです。
このように教えると、
騒いで動くより、じっとしていた方が、良いことが起こるんだな、得なんだな、と愛犬は学習していきます。
その結果、
何か欲しいものがあった時に、嬉しくても、自分で動きを止められる、
つまり、落ち着けるようになるのです。
動画では、行動形成トレーニングとご褒美が欲しくて動きまわるNちゃんが、動きを止めて立ち止まったところを褒めて、
Nちゃんが望むトレーニングを始めています。
必要なのは、本当に、たったこれだけなのです。
落ち着ける犬の育て方|興奮しても落ち着けるようになるには
興奮しないで、動きまわらないで、飛びつかないで、吠えないで、ではなく、
愛犬が自ら、動きを止める、座る、伏せる、などの、私たちが望む「落ち着いた」行動をする、
そのタイミングを静かに待って、捉え、穏やかに褒めて伸ばす。
これが、「本当に」落ち着ける愛犬の育て方です。
犬に落ち着くことを教える時に大切なポイント
動画で注目していただきたいのは、Nちゃんに落ち着くことを教えている中西薫が、
終始リラックスしていること、いつも通りなことです。
Nちゃんが興奮して動きまわっている時に、
例えば、にらんだり、じっと見つめたり、無視したり、ご褒美を隠したり、といった、
「ダメ」と分からせようとすることを、一切していません。必要がないからです。
「ちょっと待ってね」「すぐだからね」と声をかけることもしていません。必要がないからです。
「お座りして」「ふせ」「まてして」と指示することもしていません。これも、必要がないからです。
ただ静かに、ちょっと待ってあげるだけ。必要なのは、それだけです。
そして、犬が少し落ち着いて自分で動きを止めたら、そこで褒めて動けば良いのです。
どうすれば良いかがわかっていれば、私たち人間も、慌てず落ち着いて接することができます。
これは、愛犬も同じです。
「興奮しないで」ではなく、「動きを止めて」を教えると、
愛犬は、どうすれば、欲しいものがもらえるのかを理解して、自ら落ち着くことができるようになります。
犬への教育は、「どう振るまうと良いか」をわかりやすく具体的に教えることに、他なりません。
あじな動物病院行動科 中西薫
愛犬の行動で悩んでいることはありませんか?
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