あじな動物病院行動科は、2026年8月より「あじな動物病院行動セクション」へ名称を変更いたしました。

犬が散歩中に吠えるときはどうしたらいい?|まず対象を犬・人・物に分けて考える|あじな動物病院行動セクション 中西薫がお答えします

目次

犬が散歩中に吠えて困っている飼い主さんへ

散歩中に吠えて困っている


「散歩中にとにかく吠えるので、困っています。一体なんで吠えるんでしょうか?」

これは、院内レッスン、オンラインレッスンに関わらず、レッスンにお越しになる飼い主さんのほぼ全員から寄せられるご相談です。

それだけではありません。
インスタグラムなどSNSでお届けしているしつけ相談でも、毎回必ず寄せられるご相談です。

「お散歩に行きたがったから連れて行ったのに、なんで吠えるの?」
「せっかくお散歩に連れて行ったのに、なんで吠えるの?」
「突然吠えたらビックリするよ!」
「吠えてまわりに申し訳なかった。」
「吠えて注目されて恥ずかしかった。」
「吠えないでくれれば、お散歩を一緒に楽しめるのに…。」
「吠えるから、お散歩に行くのが憂鬱だよ。」

愛犬の散歩中の吠えは、その詳細は違えど、飼い主さんを悩ませるお困り行動と言って間違いありません。

あなたの愛犬は、散歩中に吠えますか?
吠えている場合は、どんなふうに吠えて、あなたを困らせているでしょうか?

犬が散歩中に吠えるとき、飼い主が焦ると悪循環になる

飼い主の焦りは吠えに関係する?

楽しませてあげようと連れて行ったお散歩で、愛犬が突然吠え始めた!

なんで?!どうして?!どうしよう?!

「やめなさい」「ダメよノーよ」「吠えないの」「すみません」

リードを引っ張って、犬に注意しながら、なんとか吠え止ませようとするけれど、全然吠え止まない。

吠える相手に申し訳なくて、冷や汗をかきながら平謝り。
吠え止む頃には、疲れてもうクタクタ。

こんな経験を、犬を育てたら誰しも一度はしたことがあるのではないでしょうか。(筆者にももちろんあります。)

散歩の途中で突然愛犬が吠え始めると、私たちはビックリしてなんとか吠え止ませようと慌てますが、その必死の思いとは裏腹に、リード(引き綱)を持った飼い主が慌てれば慌てるほど、犬はますます吠えるようになってしまいます。

これは、動物行動学で情動伝染 (Emotion Contagion) と呼ばれる、犬に見られる現象で、飼い主の気持ち(情動)を愛犬が同じく感じるようになる、というものです。

「吠えたら、人間の家族である飼い主さんが大慌てするということは、やっぱりあれ(犬が吠えている対象のもの)は嫌な / 危険なものに違いない!」
と犬が勘違いするという具合です。

でも、これでは完全に悪循環です。
いったいどうすれば良いのでしょうか。

犬が散歩中に吠えるのをすぐにやめさせる方法はある?

吠え止ませる方法はある?

「愛犬が散歩で吠えるとき、飼い主の私が慌てたら、愛犬もますます慌てて吠えるようになってしまうことはわかった。それで、どう吠え止ませたらいい?」

どんな吠えも、たちまち吠え止ませることができる方法があれば、最高ですね。

しかも、その方法が、犬に痛い思いや、精神的なショックを与えるものでなければ、倫理的にも百点満点です。

ですが、残念ながら、そんな方法は今のところ存在しません。(2026年9月時点では。)

犬の吠えは、「吠えている」その様子は一見同じでも、きっかけや、吠えの元となる感情などに、様々な違いがあり、一律同じではないからです。

それだけではありません。
散歩中にとあるきっかけで愛犬が吠え始めます。

その吠えを何かの方法により吠え止ませることができたとしても、吠える原因であるきっかけや、吠えの元となる犬の感情に働きかけているわけではないので、同じ状況に陥ると犬は再び吠えてしまいます。
これでは、吠えること自体は変えられません。吠えないようにはならないのです。

愛犬が散歩中に吠えるときは、「どうやって吠え止ませよう」を一旦忘れて、まず、「飼い主の私が慌てないように、吠えを整理してみよう」と考えてみることをおすすめします。

でも、「吠えを整理する」とは、いったい何を整理することなのでしょうか。

犬が散歩中に吠えるときは、まず記録をつけて整理しよう

散歩中の吠えを記録しよう

愛犬が散歩で吠えて困るときは、まず、愛犬がどこで、何に対して吠えているかを、整理してみましょう。

「でもいったいどうやって整理するの?散歩中は吠えてる愛犬をなんとか連れていくので精一杯だよ。」

そうですよね。
散歩中はそれどころではないですから、散歩から帰ってから、吠えの記録を改めてつけてみましょう。

散歩の吠えの記録には、①散歩の日時、②ルート、③愛犬が吠えた場所、④愛犬が吠えた対象(犬、人、物)を箇条書きにして書いてみましょう。

記録の書き方ですが、ストーリー(物語)で書かずに、簡潔な情報として書くのがポイントです。
そうすることで、後から見返すときに、愛犬の散歩での吠えの特徴やパターンを飼い主さんが把握しやすくなります。

下の図は、あじな動物病院行動セクションのレッスンで、散歩で吠える犬の飼い主さんに実際につけていただいている記録です。

< 散歩中の吠えの記録のつけ方の一例 >

平日と休日を含めて一週間、まず散歩の吠えの記録をつけてみましょう。
そして、つけた記録を振り返って「整理」してみましょう。
本コラムでご案内する、「整理」ポイントは、以下の二つです。

  1. 愛犬が散歩で吠えている時間帯とルート
  2. 愛犬が吠えている対象は、犬か、人か、物か

この二つのポイントは、散歩中の愛犬の吠えの特徴やパターンを表しています。

この二つのポイントを飼い主さんが掴むことが、愛犬が散歩で吠えにくくなる、または吠えなくなるためには欠かせません。

犬が散歩中に何に吠える?|対象刺激を犬・人・物に分ける

吠えているのは犬?人?物?

愛犬の散歩の吠えの記録をつけて、二つのポイントを掴んだら、次に、2の愛犬が吠えている対象について、見ていきましょう。

散歩中に犬が吠える対象は、大まかに分けて、①犬、②人、③物です。

レッスンで散歩の吠えの解決に取り組むときは、さらに細かく、犬が知っている(既知)/犬が知らない(未知)で分類をしますが、本コラムではそれは一旦置いておきます。

犬が吠える対象を「対象刺激」と専門用語では呼びます。

散歩の吠えの記録から、愛犬の吠えの対象刺激を、①犬、②人、③物で分けてみましょう。

例えば、①犬だと、散歩で時々すれ違う柴犬、公園によくいるトイプードル、
②人だと、ランドセルを背負った小学生の男の子、前から歩いてくる杖をついたご老人、
③物だと、マンションの前のライオンの像、カバーのかかったバイク、のように、分けてみましょう。

吠えを、対象刺激である、①犬、②人、③物で分けたら、いよいよここから吠えを治していく働きかけを始めていくのですが、全ての対象への吠えをいっぺんに治そうとしてもうまくいきません。治していくには効率の良い「順序」が肝心です。
つまり、散歩での吠えは、治しやすい対象から順に治していくことが、肝心です。

さて、吠えの対象刺激である犬、人、物のうち、一般的に犬の吠えを治しやすいのは、どの順だと思いますか?

犬の散歩中の吠えは何から治す?|対象刺激の制御しやすさで考える

吠えを治しやすい順は?

吠えの対象刺激である、犬、人、物のうち、一般的に吠えを治しやすいのはどの順でしょうか。
正解は、物→人→犬、の順です。

物への吠えが最も治しやすく、犬への吠えが最も治しにくい、ということです。
「そんな感じがする」と思っていらっしゃる飼い主さんも、多いのではないでしょうか。

なぜその順なのかには、理由があります。

理由は、「愛犬の吠えの対象刺激を、飼い主である自分が制御(コントロール)可能かどうか。
可能である場合は、どの程度制御できるか、その度合い。」です。

これではちょっとよくわからないので、具体的な例で説明したいと思います。

まず前提として、散歩では愛犬と公共の場所を歩きます。

公共の場所なので、いつ、どこで、誰と、どんな風に出会うかを、制御することはほぼできません。

例えば、ランドセルを背負った小学生の男の子が数人、大声を上げながら、愛犬と飼い主さんに向かって正面から走ってくると、そのけたたましさに毎回愛犬が大きな声で吠えてしまうとします。

男の子が一人だったら、吠えずにやり過ごせるのに。

大声を上げなかったら、吠えずにやり過ごせるのに。

正面でなく、横切ってくれたら、吠えずにやり過ごせるのに。

吠えずにやり過ごせたら、その好ましい行動を、褒めて伸ばしてあげられるのに。

でも、その場で、走ってくる男の子たちを制御することはできません。

これが、吠えの対象刺激を飼い主さんが制御可能かどうか、可能である場合は、どの程度制御できるか、ということです。

これに対して、制御可能な対象が、「物」です。

物は、その物に散歩で会わないように、散歩ルートを選んで回避することが可能です。

物は、突然動いたり、大きな音を出したりしにくいので、愛犬との間に距離をとりながら、例えば大好物の食べ物などを与えながら、徐々に慣らしていくことが可能です。(この練習を、系統的脱感作と拮抗条件付けと呼びます。)

物は、似たような物を自宅に置いて、犬に心ゆくまで調べさせたり、慣れさせたりすることができます。

物は、飼い主さんが近づいて、触って、危険な物ではないことを、犬に自分の仕草や表情で伝えることができます。

このように、散歩で「物」に向かっての吠えが一般的に最も治しやすいのは、犬や人などの生き物と比較して、「物」は飼い主さんが制御できる度合いが大きいからです。

一方、人と犬などの生き物を、散歩中に飼い主さんが制御することは、ほぼできません。
また、犬の方が人より吠えを治しにくいのは、人には言葉が通じるけれど、犬には言葉が通じないことによります。

例えば、人には「ちょっと止まってもらえますか?」と言って通じるけれど、犬にはそれが無理だからです。

このような理由から、散歩の愛犬の吠えは、対象刺激でまず分けて、次に、治しやすい順である、物→人→犬の順に治していくことを、あじな動物病院行動セクションではおすすめしています。

犬が散歩中に吠えるのを治すには、吠える代わりの行動を教える

吠える代わりの行動とは?

散歩中の愛犬の吠えを、書いて記録する。
二つのポイントで、吠えの記録を整理する。
そのうちの一つのポイントである、吠えの対象刺激別に吠えを分ける。
吠えの対象刺激を制御(コントロール)しやすい、物→人→犬の順で、吠えを治す働きかけを始める。

ここまで順に整理したら、いよいよ吠えを治すために必要な愛犬への直接的な働きかけ、つまり教育の番です。
前の章でもお話しましたが、理由があって吠えている愛犬に「吠えてはいけない」と教えようとしても、ますます興奮するだけで、ほとんどの場合で逆効果です。

必要なのは、「吠えてはいけない」と分からせることではなく、吠える対象を犬が発見したときに、吠える代わりに、どう振る舞えば良いかを、わかりやすく、一貫して教えることです。これは、代替行動分化強化と呼ばれる、犬の行動を、犬の飼い主さんにも無理なく変えるための、科学的な手法です。

例えば、これまでは、散歩中に風にはためくバイクカバーを見たら、吠えて飼い主さんを困らせていた愛犬が、散歩中に風にはためくバイクカバーを見たら、例えば、飼い主さんの目をじっと見る(アイコンタクト)ようになる。

そうすると、飼い主さんが「いいこ」と褒めて、このときにしか与えない大好物のおやつを愛犬に与える。(注、これは、吠える代わりにどう振る舞うかの一例です。散歩中に風にはためくバイクカバーに吠える犬全頭をこう教えるというわけではありません。それぞれに教える行動は異なります。)

吠えても、飼い主さんに褒められもしないし、大好物のおやつをもらえもしないけれど、吠える代わりに飼い主さんを見つめたら、褒めてもらえて、大好物のおやつをもらえる。
これはつまり、風にはためくバイクカバーが現れたときに、どう振る舞ったら良いことが起こるのか、結果的に得なのかを、犬に教えるということです。

犬にとって、この教え方は圧倒的にわかりやすく、意図せぬ誤解をさせる心配もありません。また、教える飼い主さんが必死になる必要もないため、飼い主さんも愛犬も安心して楽しむことができることも、この教え方の非常に優れたところです。

犬が散歩中に吠えるときの対策|治すための6つの手順

散歩で犬が吠えるのは治せる

「お散歩で犬が吠えるのは、どう治したらいい?」

治すために必要な手順を、飼い主さんにお答えします。

  1. まず、どんな風に散歩で吠えているかを整理するために、お散歩の吠えの記録をつけましょう。記録はまず一週間つけましょう。
  2. 記録をもとに、散歩の時間帯やルートを見直しましょう。なるべく吠えなくて済むように、散歩の時間帯とルートを調整、変更しましょう。
  3. 記録をもとに、散歩で吠えている対象を、犬、人、物で整理しましょう。
  4. 吠えの対象で、治しやすい順に、物→人→犬の順で、吠えを治していきましょう。
  5. まず物から、吠えを治していきますが、「吠えてはいけない」ではなく、「吠える代わりにどう振る舞えば良いか」を教えましょう。
  6. 吠える代わりの行動を決めたら、その行動を心から褒めて、愛犬にとって好ましいご褒美を与えて伸ばしましょう。(正の強化、と呼ばれる手法です。)

もちろん、これまで吠えていた愛犬を連れて、散歩でいきなり「吠える代わりの行動を褒めよう」と思っても、なかなか飼い主さんおひとりでは、うまくいかない場合も多いかと思います。
吠える代わりの行動を褒め、愛犬にご褒美を与えてその行動を伸ばすためには、散歩に出かける前の準備と、吠える代わりの行動を褒める基礎練習が肝心です。

あじな動物病院行動セクションでは、「あじなお散歩診断」という、お散歩での愛犬の吠えにフォーカスした行動カウンセリングを行なっています。

あなたと愛犬のお散歩がいわゆる「吠えやすい」お散歩になっていないかどうかを、オリジナル診断シートを用いて診断する55分のオンラインカウンセリングでは、吠える代わりの行動を褒めて伸ばすための準備と基礎練習について、わかりやすく、そして楽しくご案内しています。

ひとりではうまくできそうにない…、とご心配な飼い主さんは、ぜひご利用ください。

あじなお散歩診断は、こちらからその一部をお試しいただけます。

あなたと愛犬のお散歩が、もっと吠えずに楽しめるお散歩になりますように。

あじな動物病院行動セクション代表 中西薫

この記事を書いた人



中西薫 
あじな動物病院行動セクション代表。
北海道大学獣医学部入学後、同大学を自主退学。「攻撃行動の治療家」を目指し、国内外で犬の行動について学ぶ。2014年、広島県廿日市市にあじな動物病院行動科を開設。
犬の行動(Behavior)を専門とし、一般にしつけやトレーニングと呼ばれる犬の教育を、行動の科学的解析と評価に基づき、行動形成トレーニング、行動療法トレーニング、行動治療としてレッスン現場で指導している。

あじな動物病院行動セクション 中西薫について

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