はじめに
本コラムは、すでに雷を気にしている、または雷を怖がっている犬の飼い主さんに向けて書きました。雷を気にしていない犬に、予防として行う内容ではありません。
犬が雷を怖がる|留守番中に雷が鳴ったらどうしたらいい?

あじな動物病院行動セクションでは2026年、雷を怖がって苦しむ犬のための行動カウンセリング「あじな雷外来2026」を7・8月の期間限定で開設しています。
本コラムは、その雷外来で実際に複数の飼い主さんから寄せられたご質問に応えるべく、執筆しました。
雷外来で飼い主さんから寄せられるのは、「自分がいないお留守番のときに雷が鳴ったら、どうしたらいいですか?」というご質問です。
雷が鳴っているとき、自分がそばにいてあげられる場合は、なんとかなる。
だけど、仕事などで外出中に雷が鳴ったとき、家でお留守番をしている愛犬のことが心配でしかたない。ひとりで怖がっていたらどうしよう…。
みなさん、愛犬や生活環境は違えど、そのお悩みは切実です。
犬が雷を怖がるときに知っておきたい3つの雷対策

あじな動物病院行動セクション代表 中西薫が飼い主さんのご質問にお答えするコラム「あじな動物病院行動セクション 中西薫がお答えします」では、犬が雷を怖がるというお困りごとについて、これまで三つのコラムをお届けしました。
一つ目は、今まさに雷が鳴っているときに飼い主さんができる対策をご紹介した、「救急箱」として読んでいただけるコラムです。
二つ目は、雷が鳴っていない日に、次の雷に備えてできる対策と準備をご紹介した、「避難袋」として読んでいただけるコラムです。
三つ目は、愛犬の雷への恐怖や不安が悪化しているときに、さらなる悪化を食い止め、ストレスをやわらげるための対策をご紹介した、「処方箋」として読んでいただけるコラムです。
この三つのコラムに加え、四つ目となる本コラムでは、飼い主さんが留守のときに雷が鳴ったらどうすればいいかに焦点を当て、お話ししていきたいと思います。
本コラムはいわば、「見守りカメラ」として読んでいただけるコラムです。
犬の留守番中の雷対策を始める前に確認しておきたいこと

飼い主さんがいない留守番時に雷が鳴ったとき、怖がる愛犬をどうしたら良いのか。
本コラムでそのお話を始める前に、まず確認していただきたいことがあります。
それは、前章でご紹介した三つのコラムをすでに読まれていて、愛犬が雷に感じる恐怖や不安を軽減すべく、必要な取り組みを始められている、ということ。
飼い主さんがいない留守番時の対策には、飼い主さんがいるときに犬を助けるための対策を整えてから、取り組みましょう。
そうでなければ、留守番時だけなんとかしようとしても、効果を得るのは難しいからです。
まず、愛犬が飼い主さんと一緒なら雷に対処できるように、対策を整えます。
次に、愛犬がひとりのときに雷に対処できるように、対策を整えます。
大切なのは、順番です。
以下は、
①雷が鳴っているときに愛犬をどう助けるか
②愛犬のために次の雷にどう備えるか
③愛犬が以前より雷を怖がるようになっているときにどう助けるか
についてご紹介した、あじなの三つの雷コラムを前提として、お話ししていきたいと思います。
犬の留守番中に雷が鳴るなら見守りカメラを設置しよう

犬の飼い主さんから「自分がいないお留守番のときに雷が鳴ったら、どうしたらいいですか?」とご質問をいただいたとき、まず「愛犬はそのとき、どんな様子ですか?」とお伺いするのですが、約半数の方からお留守番のとき何をしているか見たことがないので、わかりません」というお返事をいただきます。
愛犬がひとりで留守番しているときに雷が鳴ったら、どうしよう…。あの子はどうしているかな…。
見えない様子を想像して案じていても、余計に不安が増すだけです。
留守番時に雷が鳴ったとき、愛犬がどんな表情や仕草を見せ、どんな行動をしているのかを、まず確認する必要があります。
そのために、見守りカメラを購入して設置しましょう。
見守りカメラを選ぶ際には、数時間の録画機能があるものをおすすめしています。
理由は、あじなの雷コラムでもお話ししていますが、かかりつけの動物病院の獣医師や、行動診療科の獣医師に相談される際に、愛犬が雷を怖がっている実際の動画があると、その後の対策づくりや治療に大いに役立つからです。
雷だけでなく、酷暑日や災害時などにも、愛犬の様子を確認するために、見守りカメラはとても便利です。
雷を怖がる犬に見守りカメラ越しに声をかけてもいい?

前章では、見守りカメラの設置についてお話ししました。
見守りカメラをセットして、留守番時に雷が鳴ったときの愛犬の様子を確認してみると、ウロウロしたり、吠えたり鳴いたり、ハァハァあえいだりして、やはり雷を怖がっている。
そんな様子が見えたとき、いったい愛犬をどう助けてあげれば良いのでしょうか。
その本題に入る前に、見守りカメラについて非常に多くいただく、ひとつのご質問にお答えします。
そのご質問とは、「愛犬が雷を怖がっているときに、見守りカメラ越しに声をかけた方がいいでしょうか? 声をかけてもいいでしょうか?」というものです。
ひとりで留守番しているときに雷が鳴り、怖い思いをしている愛犬が、同じような状況で少しでも雷を怖がらないようになるために必要なこと。
それは、愛犬がより「安心だ」と学習できる対応を、飼い主さんが落ち着いて、一貫して行うということです。
例えば、留守番時に雷が鳴っている間、見守りカメラを通して飼い主さんが落ち着いた声で「大丈夫。」と声をかけることで、愛犬が確実に落ち着くとします。(仮定です。)
これを留守番時に雷が鳴るたびに、雷が鳴っている間中、一貫して行うことができるのであれば、愛犬は「留守番→雷→見守りカメラ→飼い主さんの声→安心、大丈夫」と学習していけるかもしれません。
ですが、もうお気づきのように、これを現実に一貫して行うことは不可能です。
見守りカメラから飼い主さんの声が聞こえるときと、聞こえないときがある。それはなぜなのかを、愛犬が理解することはできません。
また、例えば雷が激しく鳴り、愛犬がひどく怖がっているときに、見るに見かねて見守りカメラから声をかけるのでは、飼い主さん自身が落ち着いて対応することも、対応を一貫させることも難しくなります。
このような場合には、飼い主さんが動揺したり、対応が二転三転したりすることで、愛犬が雷に感じる恐怖や不安を、思いがけず悪化させてしまう可能性もあります。
筆者の三頭目のポメラニアン・エルガーも、幼い頃から雷が嫌いだったので、見守りカメラから愛犬に声をかけて、なだめたくなるお気持ちは、本当によくわかります。
ですが、雷を怖がる犬の場合は特に、見守りカメラは愛犬の様子を確認するために使用してください。
時々、見守りカメラ越しに声をかけることによって、雷への恐怖や不安が改善するとは言えません。
犬が留守番中に雷を怖がったらどうする?飼い主にできること

見守りカメラで確認してみると、留守番時に雷が鳴ったとき、やはり愛犬が雷を怖がっている。
では、そんな愛犬をどう助けてあげれば良いのでしょうか。
ここからそのお話をしていきたいと思いますが、はっきり申し上げて、留守番中に雷を怖がる愛犬に飼い主さんができることは、ほとんどありません。
え? それではコラムが終わってしまう?
でも、これはとても大事なポイントなので、もう少し丁寧にご説明します。
留守番時、犬はひとりきりです。
雷が鳴っても、ひとりで対処するしかありません。
飼い主さんが一緒にいるときは、飼い主さんの存在や助けを得ながら、怖い雷に対処することができます。
ですが、飼い主さんが留守であれば、どんなに雷が怖くても、自分でなんとかするしかありません。
見守りカメラで怖がる様子を確認して、予定を早めて帰宅することは、場合によってはできるかもしれません。
ですが、留守番中、その場にいない飼い主さんが愛犬を雷から直接助けることは、基本的にはできないのです。
では、放っておくしかない? お手上げなのでしょうか?
犬の留守番中の雷対策は日頃の準備と対策が大切

留守番時に雷が鳴っても、基本的には、愛犬はひとりで対処するしかありません。
だからこそ、留守番以外のとき、飼い主さんが一緒にいてくれるときに、どのような対策をして助けておくかが、とても重要です。
日頃から、愛犬の雷への恐怖や不安を和らげるために行っている準備と対策が、留守番時に雷にさらされた愛犬を、そこにいない飼い主さんの代わりとなって助けてくれるのです。
雷を怖がる犬にはどんな対策が必要?状況別に確認しよう
これまでお届けしたあじなの三つの雷コラムでは、それぞれのシチュエーションに応じて、愛犬の雷への恐怖や不安を和らげるための準備と対策をご紹介してきました。
雷が鳴っているときに怖がる犬を助けるための対策

- 雷の刺激を小さくすること
- 愛犬に逃げ場を作ること
- 愛犬から見える場所に飼い主さんがいてあげれば良いこと
- 食べられる大好物があれば、あげてみること
- 雷を怖がる様子を動画で撮影して記録しておくこと
をご紹介しました。
次の雷に備えて怖がる犬のためにできる雷対策

- 雷が鳴る時期にやってはいけないことを確認すること
- 恐怖や不安のさらなる悪化を防ぐこと
- 逃げ場を確保し、大好物を準備すること
- 動物病院と一緒にできる対策として、抗ストレスサプリメント、犬アピージングフェロモン製品(アダプティル)、行動治療薬があること
をご紹介しました。
犬が以前より雷を怖がるようになったときに必要な対策

③愛犬が以前より雷を怖がるようになっているときにどう助けるか
では、
- 悪化している場合は、相談先として行動診療科があること
- 雷から逃れようとする犬を、閉じ込めないこと
をご紹介しました。
留守番中の雷に備えて犬の心と体の健康を整える

飼い主さんがいない留守番時に雷が鳴ったとき、大切な愛犬がなるべく怖がらずに対処できるよう、本コラムでは、これまでのコラムでご紹介した準備と対策に加えて、もうひとつ基本的な準備と対策をご紹介したいと思います。それは、常日頃から、愛犬の体と心が健康であるよう取り組むことです。
愛犬の心身の健康が著しく損なわれた状態では、雷に感じる恐怖や不安も悪化しやすくなります。
詳しくは、三つ目のコラムの「犬の雷への恐怖や不安が悪化しやすいタイミング」の章でご紹介していますので、ご覧ください。
✔【三つ目のコラム】
犬が雷を前より怖がるようになったときはどうしたらいい?|悪化のサインと対策
体の健康とは、痛みや痒み、不快感や違和感(これらを総じて英語では、Pain and discomfort と表します)といった体の問題を抱えておらず、必要な予防や治療が行われていることを指します。
また、愛犬に必要な栄養を、量的にも、質的にも、バリエーションの面でもとれていることも含まれます。
心の健康とは、愛犬が恐怖や不安、葛藤といった強いストレスで慢性的に苦しんでおらず、犬として生まれ持った行動欲求(ニーズ)を、ある程度満たせていることを主に指します。
このように、犬の心身の健康を高めていくための働きかけは、海外では Enrichment(エンリッチメント)などと呼ばれ、日本でも動物福祉への関心の広がりとともに、意識されることが増えてきました。
でも、「エンリッチメント?!」と難しく考える必要はありません。
- 愛犬に痛いところ、痒いところはないかな?
- 必要な予防はできているかな?
- 必要な健康診断は受けられているかな?
- 必要な治療は受けられているかな?
- 犬として必要なごはんを食べられているかな?
- ごはんを喜んで食べているかな?
- ごはんをちゃんと消化吸収できているかな?
(排泄物の量と状態を見ましょう。) - 犬として日々の暮らしを安心して、楽しめているかな?
- 体を使った運動は足りているかな? 楽しめているかな?
- 鼻を使った探索や活動はできているかな? 楽しめているかな?
- 脳を使って考える機会はあるかな? 楽しめているかな?
このように、愛犬の暮らしを振り返ってみてください。
それが、愛犬の心身の健康を叶えるエンリッチメントの始まりです。
愛犬に必要なエンリッチメントについて、もっと詳しく知りたい方は、あじな動物病院行動セクションのレッスンへお問い合わせください。
留守番中に雷を怖がった犬への帰宅時の接し方

留守番時に鳴る雷を怖がる愛犬を、どう助けたら良いのか。
ここまで、見守りカメラの設置と使い方、留守番以外の日頃の生活で行う準備と対策、そして心身の健康を守るためのエンリッチメントについて、お話ししてきました。
最後に、もう一つだけ。
見守りカメラに、雷にひとりで対処する健気な愛犬の姿が映っていたら、きっと愛犬の元へ急いで戻りたくなると思います。
走って帰り、慌てて玄関を開けて愛犬の元に駆けつけ、「怖かったね。辛かったね。」と声をかけたくなるお気持ちは、よくわかります。
ですが、そうしてはなりません。
そうすると、愛犬は、ひとりで留守番をすることも、飼い主さんが血相を変えるような非常事態であると認識するようになってしまいます。
愛犬が、雷が鳴らないときも鳴るときも、できるだけ安心してお留守番していられるように、飼い主さんが帰宅するときは、まず深呼吸。
それでも緊張がほぐれない場合は、帰り道に好きな味のガムを買って、ガムを噛みながら帰りましょう。
ガムを噛むと筋肉の強張りがほぐれやすくなるだけでなく、ガムを噛む口元が、愛犬には、「スマッキング(Smacking)」と呼ばれる穏やかで友好的な犬語(メッセージ)として伝わります。
お留守番を頑張ってくれた愛犬に会うときは、なるべく、いつも通りに。
「ただいま。」
と、穏やかに、笑顔で帰宅してください。
愛犬がこれからも、必要なお留守番を安心して過ごせるように。
愛犬の未来を守るために。
雷を怖がる犬と飼い主さんのために|困ったときの対策と相談

愛犬が雷を怖がり、苦しんでいることに悩まれる飼い主さんのために、あじな動物病院行動セクションでは今年から7・8月限定で、「あじな雷外来」(オンライン行動カウンセリング)をお届けしています。
開設から本コラムを執筆している8月中旬までに、日本全国から多くの飼い主さんと愛犬に雷外来をご利用いただきました。
ここで、ある飼い主さんからいただいた感想をご紹介します。
「具体的に愛犬をどう助けたら良いかも分かり、まだまだやれることがあることも安心に繋がりました。相談をするということにとてもハードルが高く怖かったのですが、勇気をだしてお願いしてよかったです。雷や花火で本当に困ってて、でもこんなことどこにも相談できないと思っている方がいたら、ぜひ雷外来で相談してほしいです。これから愛犬との時間を1分でも多く楽しみたいと思います。」
本コラムが、雷を怖がっている愛犬と、その愛犬を案じる飼い主さんの力になれることを、心から願っています。
愛犬が雷や大雨、強風や花火を怖がって困っている方は、一度ご相談ください。
個別に相談できる期間限定オンライン行動相談
「あじな雷外来2026」の詳細はこちら

あじな動物病院行動セクション代表 中西薫
この記事を書いた人
中西薫
あじな動物病院行動セクション代表。
北海道大学獣医学部入学後、同大学を自主退学。「攻撃行動の治療家」を目指し、国内外で犬の行動について学ぶ。2014年、広島県廿日市市にあじな動物病院行動科を開設。
犬の行動(Behavior)を専門とし、一般にしつけやトレーニングと呼ばれる犬の教育を、行動の科学的解析と評価に基づき、行動形成トレーニング、行動療法トレーニング、行動治療としてレッスン現場で指導している。
あじな動物病院行動セクション 中西薫について
■雷が怖い犬を助ける|中西薫の行動コラム
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■あわせて、犬の雷恐怖症について知りたい方
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